本研究では、カオスニューラルネットワークにパターンを継続的に与えることで、自己想起型の連想記憶モデル及び相互想起型の連想記憶モデルにおいて、未知パターンと既知パターンを判別し、未知パターンに対しては逐次的に学習を行うことができるモデルを提案した。 従来の連想記憶の多くは、学習時にパターンの相関行列に基づいて重みを学習し、想起時にはその重みを用いて想起を行うというものであった。つまり、学習過程と想起過程とは全く分離されていた。しかし、脳においては、学習と想起は明確には分離されていないと考える方が自然であり、生理学的な実験の結果もそのことを示唆している。 提案モデルでは、既知パターンがネットワークに与えられた場合にはそのパターンの近傍のみが探索される。未知パターンが与えられた場合には、記憶している複数のパターンの間をカオス的に遍歴されることを利用して、既知パターンと未知パターンとの判別を行っている。外部入力が未知パターンであると判断された場合にのみ、そのパターンが新しいパターンとして学習される。さらに、パターンの継続的な入力と時間加算を考慮することで、未知パターンにノイズが存在する場合や一部が欠落している場合にも正しいパターンを学習することが可能になっている。計算機シミュレーションにより提案モデルの動作が確認され、その有効性が示された。
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