本研究は、リドルドベイスンおよびカオスの制御手法を連想記憶などのニューラルネットワーク情報処理システムの高機能化に利用することを目的として、2年計画で遂行した。平成10年度は、9年度に引続き、連想記憶システムの疑似記憶解消手法の提案を主目的とした遅延フィードバック制御の解析・改良とリドルドベイスンの制御手法の開発、それに加え、カオス的最急降下法におけるカオス制御への遅延フィードバックの適用に関する研究を行ない、以下に要約するような成果を得た。 (1) リドルドベイスンの制御の基本となるカオス制御の手法として、最も簡便で有効な手法である遅延フィードバック制御法に着目し、その改良版として前年度開発した半周期遅延フィードバック法をさらに一般の対称性を持つシステムに適用可能にすべく拡張し、ローレンツ系において従来不可能であった周期軌道の安定化に成功した。 (2) カオス的最急降下法による非線形関数の最小値探索問題の求解において、遅延フィードバックによりカオスを制御することにより、局所的最小を回避する確率を高める手法を考案し、数値実験によりその有効性を確認した。 (3) リドルドベイスンの測度を遅延フィードバックおよび線形制御を用いて制御する手法を提案し、ともに不安定周期軌道の安定性を変化させることにより、リドルドベイスンの測度を大幅に変化・制御できることを数値実験により明らかにした。これにより、前年度開発した連想記憶における疑似記憶の解消方式をより効率よく動作させうる見通しを得た。 以上の成果により、リドルドベイスンおよびカオスの制御により、ニューラルネットワークによる連想記憶機能および非線形関数の最小値探索問題求解能力を向上させることが可能となった。
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