交付申請書に記したように、本研究の目的は、線形加速器中の相対論的電子ビームの断面内の密度分布(プロファイル)を、非破壊的に同定することであり、周囲に配置したアンテナの出力から、ソースを求める逆問題になる。しかも、時々刻々と変化する電子ビームの形状を、リアルタイムで求められることが理想である。 これを実現するためには、指向性・周波数選択性の優れた信号取得に関するハードウェアと、信号処理に関する分散処理を行える逆問題解析ソフトウェアが必要となる。以下に今年度の実績を記す。 ・信号取得系 ハードウェアについては、指向性の優れた検出器が必要である。今年度は、スロットアンテナとバンドパスフィルタの体系の設計・試作・評価を行い、さらに開放型共振器を用いた検出系の解析を行った。前者は、性能的には問題はなさそうだが複数の周波数に対する観測データを求める時には、毎回体系を組換える必要があり、実用時に問題となる。一方、後者は、開放型であるため鏡面間隔を変化させることが出来、その結果、指向性のみならずフィルタの性質を持たせ得ることが、解析により明らかになった。この体系では、実験時に鏡面間隔を変化させること、あるいは観測ポートの追加によって他の実験と並行しながら、計測を行うことが出来る。来年度は、試作・評価を行う予定である。 ・信号処理系 高速な処理を実現するための分散処理用ネットワークプログラムはほぼ完成した。遺伝的アルゴリズムも、簡単なモデルに対して完成した。また、この評価関数を計算するために、任意の電子ビームの分布から、電界を求める必要があるが、その際の積分を三次元から二次元に落すために、相対論的電子ビームの作る二次元グリーン関数を新たに導出し、これにより大幅に計算コストが削減できた。来年度は、測定値に含まれる誤差の影響を考慮するためのカルマンフィルタを組み込み、取得系と結合する予定である。
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