今年度の研究成果を、信号取得に関するハードウェアと、信号処理に関する分散処理を行う逆問題解析ソフトウェアに分けて、以下に記す。 ・信号取得系(ハードウェア) 昨年度評価を行ったスロットアンテナの他、今年度は、開放型共振器の試作・評価を線形加速器を用いて行った。開放型共振器の特徴として、鏡面間隔を実験をしながら変更することができ、複数の周波数を選択的に検出すること挙げられる。実験結果から昨年度行った解析と定性的に一致することが確認でき、さらに、その出力は十分であることが分かった。ただし、装置がスロットアンテナに比べて、若干大規模になるため、現在のところ、スロットアンテナとバンドパスフィルタを組み合わせた体系の方が有望である。また、バンドパスフィルタとの組合せにより、複数の周波数成分の位相差の検出の可能性を見出した。このことは、開放型共振器が断面内分布のみならず、軸方向分布のプロファイルモニターへの応用の可能性を示している。 ・信号処理系(ソフトウェア) 昨年度、完成させた遺伝的アルゴリズムに加え、新たにカルマンフィルタ、疑似データ生成系を新たに作成し、総合評価を行った。カルマンフィルタによる測定誤差の軽減により、遺伝的アルゴリズムの推定の効率を高めることが確認できた。一方、ほぼ正しい推定はできているが稀に特異な解に収束する場合があらわれた。本システムは、推定すべきパラメータ数が測定データ数より多いため、評価関数により最適なものを選んでいるが、その評価関数の選び方にさらなる工夫が必要であることを示している。残念ながら、これについては今後の検討課題である。また、遺伝的アルゴリズムのさらに内側では、境界要素法を用いているが、この境界要素法の高精度化、開放領域問題への新たなアプローチを開発し、その成果を公表した。
|