近年、社会的ニーズも高まりつつある自律走行車(人間の操作なしに自律的に走行が可能な車両)の実現において最も重要な問題は、経路上の障害物の発見とその回避である。このためのセンサとして得られる情報量の多い画像を用い、車両を誘導する方法が既にいくつか提案されている。しかしながら、それらの多くは画像処理に要する時間的制約のために、処理毎に車両を一旦停止させなければならないか、あるいは著しく高価なハードウエアを必要としているものかのどちらかであった。そこで本研究では、画像を用いて車両を自律走行させる際に一旦停止させなくとも安定して車両を誘導し続けることができ、さらに経路上の障害物を発見、および回避可能であるような自律走行車のための新たな自律航法を開発し、これを単一のTVカメラと超音波距離センサに通常の画像処理装置という極めて安価なシステム上に実現することを目的としている。 本年度は、第一に画像処理中にも車両を走行させ続けるために、画像を得た過去の時点での車両位置を推定情報により修正し、そこから現在位置を再計算するという枠組を考案し、これを自律走行車へ搭載するためのソフトウエアを構築した。第二に、画像中に現れる障害物の検知方法を検討し、その情報に基づいて障害物を回避するアルゴリズムを開発した。障害物に関する情報は、自律走行車が地図として持つ走行経路周辺の環境モデルと、実際の画像から得られる情報とを比較することによって生成される。第三に、超音波センサで得られる距離データから移動障害物を検知するアルゴリズムの開発を行い、実際の超音波センサを用いて実験的にアルゴリズムの検証を行った。また、画像による静止障害物回避行動との整合性についてシミュレーションによりチェックし、本手法の有効姓を確認した。
|