研究概要 |
本研究は,高次元分光画像センサを対象としかた新しいデータ処理・情報抽出方式について,目的指向のセンシングという観点から研究を行うものである.個々の目的に応じて抽出すべき情報を適応的に設定して対象をセンシングする手法を開発している.今年度は,高次元分光センサから定量的な情報を抽出するアルゴリズムの開発と,その基礎実験を行った.特定の物質に着目してその濃度のみを選択的に精度良く定量するために,まず,トレーニングサンプルから得た高次元分光データに対して少数の主成分ベクトルを用いてデータ圧縮を行った後,各濃度クラスが特徴空間で等方的な共分散を持つように変換する.これにより,波長間の相関やノイズを考慮したデータの表現が行える.さらに,共存物質の濃度変化によって変動が現れる空間を定義し,その直交補空間を決定する.未知試料の定量にあたっては,この直交補空間へ高次元データを射影してから定量を行う.これにより,共存物質の影響を除いた高精度な定量評価が実現される.部分空間への射影は,分光センサのチャネルにあらかじめ適切な重みを付けて検出を行うことと等価であり,目的に応じてセンサ自身が情報抽出を行うセンシング方式を設計することにも相当している.原理実験のサンプルとして,可視波長の色素をもつ数種の色素を選び,それらの混合試料について分光反射率データを取得して実験を行った.実験の結果,波長を特定の重みに固定して測定した場合と比較して,濃度定量の精度が向上することが確認できた.
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