研究概要 |
唾液を用いた非侵襲式血糖測定法確立のための基礎研究として1年間に渡り研究を行ったところ,以下の研究成果を得ることができた。 1.血糖と唾液糖の相関 健常者6名,糖尿病患者11名に75g経口糖負荷試験(75gOGTT)を行い、血糖値と唾液糖値の経時変化を調べたところ,ヒト全体に共通の血糖値と唾液糖値の相関は認められなかったが,健常者のみならず糖尿病患者においても同一被検者における両糖値の個人相関を示す結果(0.76±0.10,mean±SD)を世界で初めて明らかにすることができた。 2.唾液採取器具 日本人の唾液腺の形状に合わせて試作された耳下腺唾液採取器具を用い,健常者6名に関して血糖値と耳下腺唾液糖値の相関を測定した。その結果,耳下腺唾液は比較的採取が容易ではあるが,血糖と唾液糖の個人相関は,0.52±0.25(mean±SD)と低く,血糖値の推定には従来筆者らが行ってきた顎・舌下腺唾液糖を用いる方法が望ましい事を示唆する結果が得られた。 3.唾液分析システム 酸素電極を備えたアンペロメトリー式酵素センサとフローインジェクション式分析法をもちいて,血糖値に比べてぶどう糖濃度が1/50〜1/100の唾液糖値を測定可能な唾液分析システムを試作した。フローセルの容量を唾液の採取量の3/4程度の147μ1とし,流入液が酵素センサの測定面に垂直当るように流入口の形状に工夫を加えた。その結果,たった200μ1の唾液でぶどう糖濃度0.1〜10mg/dlが測定可能であることが判明し,健常者による in vivo評価において唾液の経時変化を測定できることを認識した。
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