平成9年度の結果を踏まえ、平成10年度は制御実験による総合的な理論検証を目的として以下の研究を行なった。 1. ディジタル制御装置の構成と高速・高精度な制御演算の実現 実システムを実時間制御するには膨大な情報を高速に処理する必要がある。従来はワークステーションを用いていたが、近年更に高速処理可能なPCが開発されているため、制御演算部には本補助金で平成9年度に購入したリアルタイム制御用コンピュータを使用し、これにより高速・高精度な制御演算を実現した。 2. ロバストH_∞/μ制御に基づくパンタグラフ制御系設計 実システムの数学モデルを導入する際には、不確かさに対してもシステムが安定性と制御性能を保存するように、システムの数学的な構造に着目し、線形分数表現(LFT)を用いて不確かさを含むモデル表現を行なった。さらに得られたLFTモデルに対してロバストH_∞/μ制御理論に基づいてロバスト性能を達成する補償器を設計した。 3. ソフトウェア/ハードウェアを組み合わせた統合的な制御環境の構築と制御実験による検証 再構成されたアクティブパンタグラフ制御基礎実験システムに対して、設計した補償器を実時間制御用コンピュータを用いて実装し、制御実験を行なった。ステップ目標値応答、ステップ外乱応答、周期的外乱に対する応答などを計測し、制御性能に対する評価・解析を行なった。その結果、高周波での不確かさをLFTモデルで陽に取り扱ったため、従来法に比べ、周期的外乱に対する応答が改善されていることが確認された。 4. 得られた実験結果の解析・考察・検討 最後に本研究成果をまとめ、国内外での学術雑誌・論文誌への投稿を行なった。
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