研究概要 |
雑音に乱されたサイン信号の推定は,通信,レーダー,制御,電力,生体工学,自動採譜など多くの分野において基本的に重要である.特に非定常信号の場合はDFTの性能が不十分なため,適応的な推定アルゴリズムの開発は重要な研究テーマであり,多くの適応アルゴリズムが提案されてきた.LMS,RLS,カルマンフィルタに基づく手法などはその代表例である. 本奨励研究の初年度では,自ら提案した最小平均p-powerアルゴリズムの性能について従来のLMSアルゴリズムと符号アルゴリズムも含めて統一的な形で解析を行うことを目的として研究を進めてきた.まず,推定の誤差信号のガウス分布特性を検証するため,各アルゴリズムのシミュレーションを行った.次に,誤差信号のガウス分布特性を前提に解析の理論展開を行った.具体的には,平均と自乗平均における差分方程式を導出し,定常状態における推定誤差(ノイズ過調整)の陽表示を確立した.さらに,スッテプサイズパラメータの大まかな収束範囲も求めた.得られた表示はp=1(Sign algorithm),p=2(LMS algorithm)とp=3,4(New algorithms)の各アルゴリズムのもので,エレガントなシリーズとなっている.このような解析結果は適応信号処理の分野で珍しく興味深い. この研究成果をまとめて信号処理の分野で最も重要な国際会議の一つ:IX European Signal Processing Conference(Eusipco-98)に投稿し,採録の通知を受けた.論文のタイトルはNovelAdaptive Algorithm Based on Least Mean p-Power Error Criterion for Fourior Analysis in Additive Noise,Paper No.418である.同時にIEEE Trans.Signal Processingにも投稿した. 今後は,当初の研究計画に沿って有色雑音の場合にも優れた推定性能をもつ新しいアルゴリズムの開発を進める予定である.
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