フラックスゲート磁気センサは、高透磁率の軟磁性コアとこれを交流励磁するコイル及び磁界検出用コイルを基本要素とするセンサで、極めて高い分解能を有する磁気センサとして古くからしられている。我々は、シリコンマイクロ加工技術に基づき、フラックスゲート磁気センサをマイクロデバイス化することに成功し、その優れた性能を明らかにしてきた。本研究では、その性能をさらに高めるとともに、その信号処理回路の一体集積化により、実用的な利点の大きい集積化マイクロフラックスゲート磁気センサの実現を目指した。実際に、MOS集積回路に基づくセンサ駆動用、信号検出用回路を一体集積化したデバイスを、本学の実験施設により試作し、地磁気レベルの磁界を安定に測定できることを明らかにした。また、実用性を考慮した場合、標準的な微細CMOSプロセル技術に基づき、後工程としてセンサ固有のプロセスを実行することで、高性能なデバイスが実現できれば理想的である。このような試みとして、2層メタル0.8μm CMOS技術をベースにしてファウンドリで試作したチップに後工程で、軟磁性薄膜の形成等を行ってマイクロフラックスゲートセンサの試作を行った。極めて小型であるにもかかわらず、10Hzにおいて6nT/√Hzという高分解能特性が得られた。また、本磁気センサを、2次元または、3次元磁気計測に応用することを目指し、センサ信号を高分解能なディジタル信号として検出することができる、バンドパスデルタシグマ変調を応用したセンサインターフェースについても検討し、シミュレーションにより、設計を進め、最も高い分解能が得られる回路動作条件を明らかにすることができた。
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