研究概要 |
ヒトの運動戦略を解明することを目指して,まず予備実験として2次元平面内の運動に限定して,筋の活動度,関節のトルクおよび関節の伸展速度を計測実験を行った.実験にあたり,多チャネルの筋電アンプを作製した.筋電図を最大8か所の筋から採取することができる.電極には銀-塩化銀表面電極を用いた.電極の直径は10mmである.電極を5mm間隔で張りつけ,筋電図を双極誘導した.筋電アンプの低域通過フィルタは2次で,遮断周波数を2.6Hzに決定した.アンプの増幅率は,32000倍にした.筋さらに筋電図と同時に肘関節の角度および伸展速度を計測するシステムを構築した.次に,被験者の手部に様々な大きさの負荷をあたえて,肘関節を角度を一定に維持する定位置制御実験と,肘関節を一定速度で伸展する等速度伸展実験を行った.筋電図は,肘関節の伸展運動であることを考慮して,上腕三頭筋から2か所,上腕二頭筋から2か所,腕橈骨筋から1個所の計5個所から採取した.肘関節の伸展速度は,30,60,90deg/sとした.様々な条件下で計測を行った後,筋の活動度を関節角度によらず一定に維持して,関節角度とトルクの関係および関節の伸展速度とトルクの関係を解析した.その結果,定位置制御時のみならず,等速度で肘関節を伸展する場合にも,関節角度-トルク関係には弾性が認められた.また,伸展速度が増大するとトルクが比例的に減少し,粘性を無視することができないことが分かった.またこの比例的な減少を,伸展速度が遅い場合にHillの式を拡張して適用することで説明できることが分かった.
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