研究概要 |
中高年層のQOL(Quality Of Life)が重要視される中,注目を浴びている疾病に骨粗鬆症がある.骨粗鬆症になった骨はもろく,軽微な外力によって骨折しやすく,老年層においてはそのまま寝たきりや家縛りの状態に陥る場合が多い.一方,骨粗鬆症の診断には従来X線による吸収法BMD(Bone Mineral Density)が用いられてきた.これはX線が骨を通過するときに吸収される度合いを計測するものであり,ある程度は骨粗鬆症の程度の参考値になる.しかし,骨折しやすいかどうかを知る基準にはならないケースも多く,他の評価指標が望まれている.そこで,ラット腰椎のマイクロX線CTによる高精細な骨断層像を用いて,皮質骨や骨梁構造と,破壊検査による強度との相関を調べることにより,新たな評価指標を見つけるべく,科研費の助成のもとに研究を行った.研究期間は2年間であり,本年度は初年度に当たる. 本年度は,骨断層像を画像処理し,皮質骨の体積,骨梁の3次元的な連結性やトポロジ的な構造と,機械的破壊による破断力,最大荷重,軸変位,靭性,最大弾性力との相関を調べた.連結性は,3次元的に分布し連結する骨梁の中で,最大の体積を有するものを求めた.また,トポロジ的な構造解析では,細線化した骨梁ネットワークの中で端点,辺,分岐点,空洞数を求めた.この結果,皮質骨体積と外力の間に高い相関が見られ,硬質な皮質骨の影響が大きいことがわかった.次に,最大連結骨梁体積と軸変位に高い相関が見られた.また,空洞数と最大弾性力に高い相関を認めた.これらはすべて従来の評価使用であるBMDより,高い相関係数であり,今後の骨粗鬆症診断の一助になり得ると考えられる.結果の解釈は,他の評価指標と比較しながら現在検討中である. 今年度は断層像の位置領域での評価であったとすると,来年度は断層像の周波数領域での評価を行う予定である.
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