研究概要 |
本研究の目的は,電磁パルス波の散乱現象を利用して物体の誘電率,形状,寸法などを精度良く推定するアルゴリズムを開発することである。この目的に対する平成9年度の研究実施計画は次のとおりであった。 1.均質多層媒質(1次元物体)によるパルス波応答の計算 2.各層の誘電率や厚さを推定するアルゴリズムの構築および有効性の検証 3.研究成果の公表 このうち計画1については,電離層厚の推定問題や地層探査を想定し,真空中に存在する有限幅の層状誘電体あるいは半無限層状誘導体に電磁パルス波入射させた場合の後方散乱応答を計算するプログラムを作成した。入射波はガウス型パルス波とし,計算手法として,FDTD(時間領域差分)法を用いた。 また計算2については,後方散乱応答に関する誤差汎関数の最小化に基づく誘電率分布の推定アルゴリズムを構築した。具体的には,誘電率分布の推定領域は区分的に均質な小領域に分割できるとする仮定のもと,誘電率の分布関数を矩形パルス関数の有限項和で表し,誤差汎関数が最小になるように展開関数を決定する手法である。種々の層状媒質モデルに対して計算機シュミレーションを実行した結果,本アルゴリズムが非常に安定した有効な推定法であることが示された。なお,この成果については計画3のとおり,国際会議および専門研究会等において既に公表済みである。 以上のように,平成9年度の研究目的はほぼ達成された。現在,後方散乱応答に雑音が付加された場合の影響について解析を行っており,成果が得られ次第,国際会議等で順次公表する予定である。また,本手法を2次元問題に拡張する作業も同時に進めており,平成10年度も当初の計画どおり研究を遂行できる見込みである。
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