本研究の遂行で得られた結果の概要を以下に要約する。 1.永久磁石に関する逆問題解析手法の開発 3次元永久磁石の最適設計問題にファジィ推論を用いた逆問題解析手法を適用した。放射光発生装置アンジュレータモデルに新たに開発した逆問題解析手法を適用することによって、所望の電子軌道を得るための永久磁石の最適設計を行った。これにより従来法では、困難であった条件下においても永久磁石の最適化が可能となった。 2.ラプラス変換境界要素法を用いた逆問題解析手法の開発 研究代表者らは、電磁現象における動的な逆問題解析のためにラプラス変換を用いた境界要素法を開発してきた。金属構造体の傷・欠陥を事前に発見するための過電流探傷試験は、被試験体の材料の不均一等から、不適切問題と呼ばれ、センサーから得られた磁束密度等の情報から傷・欠陥の同定を行うことが困難であった。これに対し、特異値分解とファジィ推論を適用することによって、それまでは不可能であった傷・欠陥の同定が可能となった。 3.コンクリート内鉄筋骨材欠陥についての逆問題解析手法の開発 コンクリート構造物に対して外側から磁場をかけ、その磁場の変化を外部のセンサーにより測定することによりコンクリート内の不良鉄筋骨材を同定するものである。同定する領域が2次元となるため、その同定は困難となる。現時点では、本同定問題にファジィ推論を用いた逆問題解析手法を適用している段階である。今後、不良鉄筋骨材同定に対して、信頼性の高い同定手法(逆問題手法)を開発していく予定である。
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