研究概要 |
本研究初年度の研究成果は次のようにまとめられる.研究の第1段階として,免疫系の数理モデルを,認識システム,抗体発生システム,記憶学習システム,回復システムの4つに役割分担させ,非線形ハイブリッド微分方程式としてプログラミングした.これを単に制御器として見なした制御システムの数値シミュレーションでは,演算時間の問題から実制御対象に適用することは難しく,不安定系には適用することができないことが数値的に確認された.この問題に対しては,ここでは,処理速度に対する改善と多様な評価関数へのフィッティングを考慮して,従来の適応制御システムと免疫系を組み合わせる制御系を試みた.これが研究の第2段階である.このような適応制御方式との組み合わせを成し遂げるためには,適応制御理論における,非線形系,時変系,ロバスト性,分散系などの問題を解決する必要があり,後述する研究発表では,これらに対する有効な適応制御手法を提案し研究発表を行っている.特に,非線形制御対象に対して,ニューラルネットワークと従来型適応制御であるMRACSを組み合わせた方式の有効性と安定性を証明することができた.現段階では,上記のニューラルネットワーク部を免疫系に置き換え,時変系,ロバスト性,分散系などを考慮して,安定性解析とその速度面での改善の研究を行っている. 本研究の最終年度では,本年度得られた適応システムの構成法に基づいて,実機の実装を目指した数値シミュレーションを行う予定である.そこで用いられるモデルは,当初の計画ではインバータ駆動誘導電動機を想定していたが,制御理論のベンチマーク問題として頻繁に取り上げあられている倒立振り子をモデルとし,実機運用を試みる.この変更理由は,後者のモデルに対しては各方面から多くの研究成果が報告されており,本手法との多角的な比較検討が遂行しやすいためである.
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