研究概要 |
本研究の実績は次の3つにまとめられる.[1.免疫系の数理モデル構築]免疫システムを,実際に有用とされているモデルを参考にして,認識システム,抗体発生システム,記憶学習システム,回復システムの4つに役割分担させ,4つのサブシステムからなる非線形ハイブリッド微分方程式としてプログラミングした.[2.免疫制御系による数値実験と実楼実験]で構築した免疫系を制御器とした制御システムについて,数値シミュレーションおよび倒立振り子による実機実験を行い多角的な評価・検討を行った.数値実験では免疫の効果が発現していると見られる部分もあったが,制御入力の発生が遅いなど実用化には何らかの工夫が必要となる事が判明した.また,実機実験では,免疫制御系部における演算時間の問題から実制御対象に適用することは難しく,倒立振り子などの不安定系にはそのままでは適用することができないことが判明した.[3.免疫制御系の理論的解析]免疫制御系部の処理速度に対する改善と多様評価関数へのフィッティングを考慮して,従来の適応制御システムと免疫系を組み合わせた免疫適応制御系の理論的研究を行った.現段階までに推定機構を含む制御系においてそのパラメータ推定の仕組みが内部モデル原理に基づく2重フィードバック構造にあることを解明し,この事実に基づき,免疫適応制御系の時変系としての振る舞いとそのロバスト性などを解析した.しかし,そこで得られた条件はその対象の内部状態とパラメータに依存し,実際の制御系を構成する設計パラメータに反映させることには難しさがある.また,処理速度の向上については,制御系をソフトウエアとして実装するよりも免疫系をそのままハードウエアとして実装すべきであるという結論を得た.
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