本研究は、原子間力顕微鏡(AFM)の原理を用いた位置計測装置(AFMエンコーダ)の製作を目的とする。基本構造は製作が容易な斥力型AFMである。AFMカンチレバ-の変形量の検出にマイケルソン干渉計を用いる。ライン状に集光する半導体レーザとフォトダイオードアレイを使用し、2個のAFMカンチレバ-の変形を同時に検出する。 光源の半導体レーザはライン状に集光するように設計されている。半導体レーザ光はビームスプリッタで二分割される。参照光は全反射ミラーによって反射され、物体光はAFMカンチレバ-によって反射される。ライン状に集光する半導体レーザを用いたため、参照光は空間的に連続であるが物体光は2個のAFMカンチレバ-の配置を反映した離散的な光となる。参照光と物体光はビームスプリッタにて干渉し、フォトダイオードによって検出される。フォトダイオードによって検出される光強度の変化はAFMカンチレバ-のたわみによるものである。 位置計測の分解能は原理的に基準スケールの周期により制限されるが、基準スケールに高配向性グラファイト(HOPG)を用いることにより、原子レベルの位置計測が可能である。HOPGの表面形状を2個のAFMカンチレバ-によって検出し、位置計測の基準スケールとして用いる。検出した信号の周期より変位量を検出し、検出信号の位相差より変位方向を検出する。 振動やノイズなどの外乱の影響を少なくするために、装置のコンパクト化を図った。また、外部光や空気中の埃や空気の揺れがノイズとならないように、装置全体を密閉することによりノイズの減少を図っている。
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