研究概要 |
パソコンベースでの採譜処理目的に本年度の研究を行った.特に,採譜を行う上で重要な音楽を構成している各音の持続時間を決める研究とその音の音階を決める研究を行い,下記のような結果を得た. (1)音階の決定に関する研究 楽器が奏でる音は基本波成分と高調波成分からなる.この楽器が奏でる音の基本波成分と高調波成分のパワーの比は楽器の種類や基本周波数によって異なる.このことから基本波成分と高調波成分のパワーの比のテーブルを用意する必要があるので,楽器の音の分析を複素1次系をもとにした再帰型短時間スペクトル分析法に行い,分析結果のデータベース化することができた. (2)音の持続時間の決定に関する研究 一般的に音の終了時点というのは確認が困難であるので,音に立ち上がり時点から次の音の立ち上がり時点までを各音素の持続時間と考え,振幅の変化を調べるのに有利な表現である短時間エネルギの差分データを用いて音の持続時間を決定していた.しかし,音に立ち上がりが小さい場合には抽出できないという問題点があった.そこで,音に持続時間の基準となる基準拍と周波数分析によって得られた各音階のパワーデータを用いることによってこのような問題が解決できた. (3)採譜処理に関するその他の研究 拍子については,従来のような音響パワーの変化パターンを用いて,2拍子系か3拍子系か判断する方法ではなく,メロディーの周期性から求められることがわかった.また,音階データの転調の有無に関わらず,調子を決定することが可能な方法を提案することもできた. (4)その他の研究 LMSアルゴリズムを用いた周波数分析法の実時間処理の可能性を確かめるために,このシステム同定法の1つである周波数応答法に応用し,その可能性を確かめることができた.
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