研究概要 |
多数の誘電物体からなる不規則媒質中の波動を,本研究者らにより最近提案された新しい多重散乱理論(南部,立居場:Waves in Random Media,vol.6.no.4,1996年)に基づいて記述し,媒質の等価媒質定数を記述するパラメータである等価誘電率の近似式を解析的に導出し,有効性を確認するために数値計算を行い,従来の方法との比較・検討を行った。さらに,大地における電磁波の反射係数と,地中の水分分布の関係を調査するための数値計算を行った。本年度得られた研究成果を以下に示す。 1.本研究で得られた等価誘電率算定式は,従来の方法が適用できないような高誘電率,かつ,高損失の誘電物体からなる不規則媒質についても,正確に等価誘電率を算定できることが確認された。 2.本研究で得られた等価誘電率算定式は,精度が良い反面,従来の他の方法による算定式に比べてやや複雑な記述となっているが,実用上(等価誘電率算定プログラムの作成上),特にこの分野の専門的知識を持たない研究者・技術者でも十分使用できる。 3.地中における水の含有量が深さ方向に任意の分布を持つような大地のモデルを仮定し,電磁波が垂直に入射する場合の大地の反射係数を,導出した等価誘電率算定式を用いて数値的に求めた。 今年度は垂直入射についてのみ検討したが,次年度は,任意の入射角に対する反射係数を求めることにより,土中探査(主として水資源探査)技術開発のための基礎データの構築を目指す。また,有限領域の不規則媒質の等価誘電率算定については,今年度は有効な結果を得られなかったので,引き続き,研究を継続する。 本研究は,各種リモートセンシング及び衛星通信技術の基礎研究として有用である。
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