研究概要 |
本研究が掲げる課題に対し,平成9年度には,以下の2つの切り口からのアプローチを行った. 1)コンクリートの乾燥収縮および自己収縮により部材内部に導入される初期応力と巨視的ひび割れの発生の予測 2)乾燥収縮による表面ひび割れが発生したコンクリート部材中の物質移動現象の予測 1)については,研究代表者がこれまで開発した,コンクリートの細孔構造に基づくコンクリート中の水分移動モデルおよび収縮モデルと,部材表面における微視的ひび割れの形成による応力緩和を表現したひずみ軟化型構成モデルを用いて,部材に導入される初期応力を評価するシステムを開発した.一軸拘束ひび割れ試験との比較を行い,導入される初期応力の合応力が妥当であることを確認するとともに,部材を貫通する巨視的ひび割れの発生条件について検討した.断面の平均応力が極大となったときにひび割れが発生すると仮定すれば,実験結果と整合することを見出した.しかしながら,そのメカニズムについては明らかではなく,平成10年度にその解明に取り組むこととした.また,部材内部に一様に導入される初期ひずみとして取り扱うことで,コンクリートの自己収縮を,本解析システムの中で考慮できることを示した. 2)については,コンクリート部材表面付近における水分移動,水分の逸散に伴う収縮ひずみの発生,初期応力の導入,微視的ひび割れによる損傷の発生,微視的ひび割れによる水分移動抵抗性の低下を考慮した連成解析システムを開発した.本システムは,鉄筋コンクリート部材のかぶり部分の物質移動現象を評価する基本となることを目的としている. 平成10年度には,これらの成果を統合するとともに,コンクリート構造物の長期供用性能の評価に結び付ける研究を行う.
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