デサリネーションはコンクリート中の塩化物イオン(Cl^-)の除去を目的とする電気化学的手法である。デサリネーションはこれまで塩害により劣化したRC構造物への適用が検討されており、PC構造物への適用は見送られてきた。これは、デサリネーションをPC部材に適用する際の最大の問題点として、PC鋼材の水素脆化の可能性があるためである。そこで、本研究ではあらかじめ塩化物を混入したプレテンションPC角柱供試体にデサリネーションを施した時の、PC鋼材の力学的および化学的性状の変化を検討することとした。 本研究から、現在得られている結果をまとめると次のようになる。 (1)8.0kg/m^3のCl^-を混入したプレテンション型PC供試体に通電処理を施し、低ひずみ速度引張試験を行ったところ、PC鋼材の弾性挙動と引張強度に到るまでの塑性挙動に大きな影響は見られなかったが、破断強度、絞りなどに水素脆化の影響が現れた。 (2)通電処理を行った供試体のPC鋼材の吸蔵水素量測定の結果、拡散性水素の放出ピークが検出された。 (3)通電処理後に1ヶ月までの静置を行ったところ、拡散性水素の第1ピーク(470K 付近)が消失し、水素脆化による鋼材の破断挙動の変化も回復改善された。 以上より、デサリネーションをPC構造物に適用することにより、通電期間中および処理後数週間程度において、水素脆化に起因する遅れ破壊の可能性があるが、比較的短期間でこの様な状況は改善され、さらに、塩害による劣化対策としても有効であることから、デサリネーションのPC構造物への適用は有効であると判断できる。
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