研究概要 |
本研究は,身近な計算機環境を利用することで,大型土木構造物に適した動的有限要素解析の並列・分散アルゴリズムの開発を行い,大型構造物の合理的な耐震診断解析法の構築を目指すものである.初年度の研究実績として,1)各種領域分割解析法の再評価:3次元動的線形問題の有限要素解析および有限要素逆解析に対して,現有の反復計算サブ構造法(ISM),対称グループ分割法(MBSG),静的縮小法および動的縮小法を適用し,非均質材解析能力,所用記憶領域,精度などの面での性能評価を行い,それぞれの有効性と応用範囲を明らかにした. 複雑な構造システムの構造同定の分散化:構造物の変形あるいは固有振動特性の計測情報による構造物の有限要素離散化構造同定法を上記の各種領域分割解析法の概念に基づき発展し,部分構造同定手法の試みを行った結果,静的縮小法および動的縮小法による部分構造同定手法の有効性を確認できた.その成果を関係の学会に公表し,学術誌に投稿している. 3)大規模動的線形構造解析の並列・分散アルゴリズムの定式化:静・動的縮小法を導入した部分構造同定法のアルゴリズムを大規模システム論の概念に基づき一般化し,連続しているサブ構造体の集合体としてハイブリッド仮想仕事原理によって分散アルゴリズムを定式化できた.ここでは,変分原理に基づいた加速度の適合拘束条件をラグランジュ乗数法によって施している. 4)並列・分散ハードウエア上の検討:一台のワークステーションをホストコンピュータとし,入力データの保存,領域分割計算,各サブ領域の要素レベルの質量,剛性,減衰マトリクスの作成,要素レベルの内力,応力歪みなどの物理量等の計算を行い,それと並列に高速計算が必要とする各サブ構造物の連立方程式の求解と逐次求解,加速度の適合拘束条件の実施などの計算を,別の高速CPUマシンで行うようになっている計算システムを用いて,その有効性を検討した. 今後,分散・並列処理に適した全体構造の節点番号の付け方および各サブ領域の内部節点のバランスが取れた自動分割手法の提案,一般的な非線形有限要素解析コードへの取り込み,大型構造物の静的応答情報や固有振動特性による構造同定解析ツールの一般化,大型実構造物の耐震診断業務への応用などを行う予定である.
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