研究概要 |
岩盤割れ目系はサイトによって異なる。これは割れ目の形成過程がその地域の受けた応力履歴に依存しているためである。したがってその地域の地史学的な側面、特に割れ目系の形成過程を明らかにし、岩盤としての変形挙動や水の流れと関係づけていくことが割れ目系を評価するうえで重要である。そこで本研究では変位計測データや湧水状況などの明らかになっている試験サイトを選定し、割れ目調査を実施することによりその地域のモデル化を行うとともに、室内実験を通して割れ目の形成過程に関する考察を行った。 割れ目系の調査は釜石鉱山内の550mレベル坑道を対象として実施した。その結果によると,ここでの割れ目系は岩体冷却時の引張割れ目および過去の応力場においてせん断変位を生じた割れ目に分類できる。さらに充填鉱物の種類から,せん断割れ目には初期の引張割れ目が再動したものと新たに形成されたものがあり,特に粘土化し脆弱化した割れ目は比較的新しい時期に活動したと考えられる。この脆弱化した割れ目系は,二次元的にはHill(1977)のメッシュモデルでその大部分を説明でき,現在の岩盤の変形・浸透特性に大きく影響していると考えられる。せん断センスから推定される過去の応力場は東北東-西南西圧縮場における走向すべりであるが,現在の応力場はほぼ南北圧縮に近く,過去の応力場とは異なっている。ここでの水みちの方向分布は過去の応力場と密接に関係していることを示した。 稲田花崗岩を対象としたひずみ速度を変化させた三軸圧縮試験からは,ひずみ速度が小さくなると,同一の応力状態においても軸ひずみ-横ひずみ関係が変化することが明らかとなった。試験後の供試体中のマイクロクラックをレプリカ法により抽出すると,この変化がマイクロクラックの分布と密接に関係していることがわかった。すなわちクラックの分布はひずみ速度の影響を強く受けることが明らかとなった。
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