本年度は不飽和土の三次元応力状態における強度特性と研究するための実験装置の開発とその装置を用いて、せん断履歴を有した飽和粘性土の実験を行った。 平均有効主応力p′および中間主応力係数bを一定条件に保ったまま、任意の主応力方向αでせん断履歴を載荷し、誘導異方性を与える。その後、等方応力状態で中空ねじり排水せん断試験を実施し、せん断履歴時の最大主応力方向αが粘性土のせん断特性に与える影響について実験的に検討を行った。また、粘性土の弾塑性構成モデルの一つ、修正カムクレイ・モデルの降伏曲面に誘導異方性を表現できる新しい構成則の確立を行った。本研究で得られた成果は以下の通りである。 1.誘導異方性は弾性領域を変化させ、土の変形挙動に影響を及ぼす。弾性領域の変化の割合は、せん断方向が異方圧密時の最大主応力方向αと一致しているときが最も大きく、せん断方向がαから90度回転した方向のときは弾性領域は等方圧密時と変化しない。 2.誘導異方性は強度(破壊)には影響を与えず、残留状態は等しくなる。 3.せん断履歴時の最大主応力方向αによって、せん断時の体積変化挙動は異なる。体積変化はせん断方向がαと一致しているとき最も小さく、せん断方向がαから90度回転した方向のときが最も大きくなる。 4.修正カムクレイ・モデルに誘導異方性を表現できる新しい構成則を確立し、誘導異方性による弾性領域の変化、せん断時の体積変化挙動をシミュレートした。実験結果と解析結果を比較検討することにより、ほぼ類似した結果を得ることができた。
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