研究概要 |
本年度は、昨年度の粉砕泥岩試料を用いた室内実験の結果に基づいて、泥岩砕石を用いて築造した高盛土の変形・安定問題を数値シミュレーションにより検討した。泥岩自身、土質力学的に解釈すると、超過圧密粘土と第1次近似することができる。そこで、泥岩砕石盛土を超過圧密粘土の盛土と見立てて、3種類の高さ(10m、30m、50m)の道路用盛土について、スレーキングにより時間とともにどのように変形・破壊が進行してゆくか、また破壊を抑制するにはどのような処置が必要かを調べた。計算には水〜土連成下負荷面カムクレイモデルを用いている。以下に得られた結果を示す。(1) 現行の施工管理基準では、高さ10mの盛土は安定を示すが、30,50mの盛土は時間とともにスレーキングを起こし破壊に至った。特に50m盛土では、盛り立て後10年頃から変形が起こり始め、約50年後にはスレーキングによる円弧滑り破壊が生じた。(2) 30,50m盛土とも十分に締め固めれば、破壊を抑止できるが、現行の締め固め機械の容量をはるかに越えた締め固めエネルギーが必要になる。(3) 破壊を抑止する他の方法としては水の処理で、盛土底部からの水の浸入を抑えれば、スレーキングは起こらず、各高さの盛土とも安定を示した。従来の研究成果からせん断と水の供給により、スレーキングは著しく起こることがわかっており、このことからも水の浸入を抑えることが重要であることと考察した。(4)また、盛土だけでなく盛土を支える地盤の強度や透水性にも、盛土の安定問題は影響を受ける。すなわち、地盤の支持力が小さいといくら盛土を締め固めていていも地盤とともに破壊してしまうし、地盤の透水性が良いと、盛土内に水が浸入しやすくなり、破壊してしまうことがわかった。
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