研究概要 |
根系が,斜面の土を拘束すれば法面補強効果が期待できる.しかし,現状では樹木が大木化すると,風の振動が地盤を緩めるというマイナス効果を重視し伐採するのが一般的である.しかし,根系の緊迫力により土のせん断強度を増加させるプラス効果が,どのような条件で消失するのか明らかでない.本研究では,(1)根自体の引張強度特性,(2)土との複合材料としての強度特性ならびに(3)風荷重による木の揺れが周辺地盤に及ぼす影響をそれぞれ調べることによって,樹木根系による人工斜面の補強効果について,工学的な裏付けを行うことを目的とするものである.上述の研究テーマのうち,本年度は根の強度試験ならびに複合材料としての強度特性について調べた. 根の強度試験は,その試験方法自体が規定されていない.試験のポイントとしては,根をしっかり固定することであり,これにより切断時の強度と変形量が測定可能になる.試験装置に直接固定すると,固定部で切断することが多く,セメントや針金で固定したが,最終的にはエポキシ系の接着剤で固定化することにより7〜8mm程度までの根系であれば試験ができるようになった.この方法で針葉樹と広葉樹の根系の試験を行い,根の直径と強度の関係を調べるとともに,伐採により朽ちる過程を想定し,長期間乾燥,湿潤保管した根の引張強度の劣化を調べた. 複合材料としての強度特性として,直径5cm,高さ10cmの円柱供試体内部に,根を模した凧糸を挿入して三軸圧縮試験を行い,せん断強度を比較した.その結果,あくまでも根のモデル試験であるが,強度が増加することを確認した. 次年度は,樹種を増やしデータを蓄積するとともに,風荷量が地盤に及ぼす影響を室内,室外試験により調べ,根の補強効果とマイナス効果について検討する.
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