研究概要 |
本研究は,(1)樹木根系(単一根)の引張強度特性,(2)土との複合材料としての強度特性ならびに(3)風荷重による木の揺れが周辺地盤に及ぼす影響を実験によって調べることにより,樹木根系による人工斜面の補強効果について工学的な裏付けを行うことを目的としている.このうち昨年度は,(1)の試験方法の確立と(2)の強度特性を中心に研究した.その結果(1)については試行錯誤によりエポキシ系の接着剤で固化すれば7〜8mm程度までの根系であれば試験可能となり,(2)についても根系による補強効果が明らかになった. そこで本年度は,根系の引張強度試験と風荷重による影響について検討した.引張強度試験を行うにあたり,まず初めに樹木の選定を行った.樹木の分類にはその指標をどこに置くかで様々な方法が考えられる.本研究では根の張り方(根鉢)に着目して,苅住が高木に対して分類した8種類の根鉢形状の中から5種類を選択し,大学構内で採取可能な樹種を選んで試験に供した.試験結果から,引張強度は樹種によって異なり,各樹木に対して行われた既往の引倒し試験結果に対応させたところ,引張強度の小さなもの引倒し抵抗力は逆に大きくなる興味深い知見が得られた. 次に,風による樹木の揺れと地盤の応答を調べるために,室内で模型による振動実験を行い地表面の加速度応答を測定した.地盤の堅さ,模型樹木の長さと根鉢模型の大きさ,外力の大きさをパラメータとした実験結果から,地表面の加速度応答は最大で60gal程度で,,地震時の加速度とすればクラックの入るほどの値ではない.また,高さ1.5m程度の幼木による屋外試験からも同様な結果を得ている.しかし,模型実験と限られた幼木のみの結果であり,実樹木と実際の強風時における測定が必要不可欠だが,今後の研究課題として継続していく予定である.
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