研究概要 |
(1)液状化による大規模な地盤変位が確認されている,1948年福井地震(森田町),1964年新潟地震(新潟市),1995年兵庫県南部地震(神戸市)の震害事例を調査した.収集した資料は,当該地区におけるボーリングデータと側方流動ベクトルであり,それらのデータをデジタルデータ化した. (2)地盤の勾配分布と側方流動との関係を調べるため,福井地震と兵庫県南部地震の側方流動事例を統計的に検討した.勾配分布としては地表面勾配と液状化層と非液状化層の境界面勾配に注目し,その勾配方向と側方流動方向について検討した.その結果,表層付近に液状化の程度が高い層が存在する場合には,側方流動の方向は地表面勾配の影響を受けやすく,標高の高い所から低い方に向かって流動しやすいことを明らかにした.一方,表層付近に非液状化層または液状化の程度の低い層が存在する場合には,側方流動の方向は地表勾配よりも液状化層厚の影響を受けやすく,液状化層の薄い所から厚い方に向かって流動しやすいことを明らかにした. (3)地盤の硬軟分布と側方流動との関係を調べるため,新潟地震と兵庫県南部地震の側方流動事例を統計的に検討した.地盤の硬軟分布を示す指標としては標準貫入試験より得られるN値を用い,その空間的な分布特性を示す指標としてセミバリオグラムを改良した正負バリオグラムを提案し利用した.対象地区における硬軟分布と側方流動の量と方向の関係を調べた結果,N値の相関距離と側方流動の量,またN値の相関距離の卓越方向と側方流動方向の卓越方向とが一致し,大きな側方流動は軟弱地盤の比較的均一な方向に沿って発生することを明らかにした. (4)現在の側方流動の簡易予測式の多くは液状化層厚と地表面勾配をパラメータとしているが,以上の結果より,表層付近の液状化の程度によってその影響度は大きく異なることを示し,今後の側方流動予測における問題点を指摘した.
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