本年度は2ヶ年計画の最終年度であり、昨年度の研究成果を受けて、研究を進めると共に、本研究の成果をまとめた。 昨年度は地表面の不均一性を考慮した領域平均フラックス算定式、ならびに集約化規範を導出したが、地表面の不均一性をとその扱い方についてまとめた。不均一性は二つの階層からなるものと考えるのが適している。与えられた領域内での不均一性のうち、上部階層は土地被覆分類で表わされる不均一性(サブ領域スケール)で、下部階層は同一土地被覆分類内での物量分布で表わされる不均一性(サブ領域内スケール)であり、これらはそれぞれ、数値モデル内で、離散型、確率密度関数で記述するのが良いことを示した。 地表面から地面への水の浸透については、浸透量を決定する4つの土壌特性値と状態量の初期飽和度の全てについて集約化規範を導出した。実測された同一サイト内での土壌特性分布統計量を集約化規範に代入して計算したところ、飽和透水係数の分布の影響が一番大きく、陽に影響を取り扱わなければならないが、それ以外の土壌特性値については、平均値を用いれば精度良い近似値が得られることを明らかにした。また初期飽和度については、同じ分散に対しては、飽和に近い場合の方が集約化が難しいと言える。しかし、実際の分布では飽和付近で分散は小さくなるので、初期飽和度の影響も通常大きくはない。 以上の成果と昨年度の成果により、地表面熱収支と浸透に関して、不均一な領域の数値モデル内での取り扱い方、並びに集約化に関してその指針を明らかにすることができた。但し、熱収支プロセスと、水収支プロセスを統一的に扱った集約化手法、並びに規範は今後の課題といえる。
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