研究概要 |
研究の目的:砕波帯内での乱れが、底質移動、物質拡散、エネルギー減衰、流速分布等に及ぼす影響の重要性が認識されてきている。砕波帯内の流速測定については、これまで岸沖・鉛直の2成分を対象としたものがほとんであったが、砕波による乱れは本来極めて3次元性の強い現象である。また、斜降渦による底質の巻き上げや、水平2次元面内における物質の移流・拡散等については、流体運動を3次元的に把握する必要がある。そこで本研究では、斜面上の砕波について、2成分レーザ流速計による下方および側方からの流速測定を詳細に行い、砕波帯内に3次元の乱れ特性について検討を行った。 研究内容:2次元造波水路に下面ガラス張りの1/20一様勾配斜面を作成し、砕波帯内の3つの測線において底面上1mmから鉛直方向に15点程度測定点を配置し、T=2.2、Hi=11.5cmの規則波について流速変動を測定した。測定はまず下方から岸沖及び沿岸方向の流速を毎秒約1,500個で100波分測定し、続いて側方より岸沖及び鉛直の流速を測定した。この水路の幅は50cmであり、砕波帯内の代表的な水深より十分大きいので、砕波による乱れの3次元性が強く出ており、この構造は底面近傍まで保たれている。底面境界層内では底面の影響性は損なわれていないと考えられる。乱れの抽出は、3〜50Hzのバンドパスフィルターを用いて行った。 主要な結論:1)突っ込み点以降においては、境界層内を除いて上部の乱れの影響が強く、位相の経過と共に底面方向へ伝播している。2)波谷より下の領域では乱れの3次元で鉛直方向の乱れが小さい。3)砕波帯内の乱れ構造は、中層部では3次元的、底層部では水平方向の乱れが支配的である。
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