研究概要 |
森林の水環境保全機能に関する基礎的地検を収集するとともに,森林域での流出現象における流量・水質時系列の確率的変動特性を森林内環境諸量の関数として評価する手法を確立するために,人為的影響の無視できる流域最上流森林域(岐阜大学流域環境研究センター高山試験地周辺の木曽川水系飛騨川最上流青屋川流域:流域面積約4,500ha)を対象とした水文・水質・気象に関する総合的現地観測を実施した結果,次のような研究成果を得ることができた. ●営林署提供の森林管理簿の解析から,植生と土壌との間の結合確率特性を明らかにし,この結合確率分布は植生成長率と単位面積当たり材積とにより表現されることを示した. ●因子分析,主成分分析および重回帰分析より,森林流域内の渓流中の全窒素量および流量が植生成長率,単位面積当たり材積,褐色森林土壌面積割合および常緑針葉樹面積割合に支配されていることを明らかにした. ●林内外の降雨量が標高に比例するのに対し,林内降雨中の全窒素量は空間的に一様となることを明らかにした. ●森林流域内での全窒素収支過程を時間発展型の微分方程式として定式化し,1996年の連続4日間および1997年の連続6日間の集中観測データを用いてこの全窒素収支モデルを検証することができた. ●土壌水分量の時間変化は降雨量のみならず,森林内の水蒸気フラックスに大きく支配されており,こうした影響が流出流量にも大きく影響を及ぼしていることを明らかにした.
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