研究概要 |
一連の植生水理に関する研究を概観すると,植生による速度分布の変化やそれらによる流砂への影響など,植生帯と無植生帯との間での乱流輸送に関するものが多く見られる.しかしながら,植生を有する河道の洪水疎通能や河床・堤防の安定性,流水に対する植生の安定性など,実務上極めて重要な項目に対して,何ら適切な解答が得られていないのが実状である.本研究の最終的な目標は無数の植生を有する植生帯の河川流に対する影響を明確にすることにある.しかしながら,対象とする空間スケールを大きくすると植生と乱れの相互作用についても空間平均された曖味なものになってしまい,その本質を見失う可能性が生じる. そこで,ここでは植生の茎の直径程度あるいは植生の背後に生じる後流が認識できる程度の長さを最小のスケールとして,植生の運動,植生を起源として生じる乱れと水流の持つより大きなスケールと乱れとの相互干渉を明らかにすることを目的とする. 本年度は主として1)固体粒子群と乱流場との相互作用に関する数値計算および2)PIVによる流速場計測技術習得に関する検討を行った.1)により固体粒子群の混入により比較的粒径が大きい場合については,粒子後流により生じる乱れにより水流の乱流強度は増加するが,乱れのスケールは逆に減少し,両者が重合すると全体としては乱流輸送が抑制されることがわかった.一方,粒子径が小さい場合には乱れ強度,長さスケールともに抑制されることがわかった.また,固体粒子と乱流の相互作用を導入した数値計算を実施した.2)については,PIVを用いて透過性構造物から生じる乱れ場と周辺流動との相互作用について検討することを試みた.流速の空間分解能や時間分解能などについて様々な問題が生じ,解決は次年以降に持ち越しとなった.
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