研究概要 |
河岸に堆積した底泥除去の一手法として,波(砕波)による効果を室内実験により検証した.ここでは傾斜面に作用する衝撃圧に着目し,その作用をとりまとめた.本年度の研究成果は以下の通りである. 1.砕波実験は現地河道両岸の堆積状況から,従来の研究ではあまり議論されていない1/5勾配で行った.固定傾斜底泥面上に作用する衝撃砕波圧を水塊の跳ね返りを考慮した運動量保存式から求め,衝撃砕波圧算定式として定式化した.この衝撃砕波圧算定式にかかる各係数は,別途実施した固定傾斜面上での砕波実験の結果をもとに定めた.このとき,衝撃圧pの力積と最大衝撃砕波圧p_mによる平均力積との比kは2.5〜2.7であった. 2.衝撃砕波圧算定式をもとに入射波形勾配と第1突込点での最大衝撃砕波圧の関係を求めた.この結果,入射波高が一定であれば,波形勾配の増加とともに衝撃砕波圧は減少し,また,同一波高,同一波形勾配であれば,定常時の第1突込点での最大衝撃砕波圧は実験開始初期のそれと比較して,最大で15%程度減少した. 3.洗掘実験は,現地河川底泥を不撹乱の状態で持ち帰り,これを実験水路内に1/5勾配で設置して行った.実験観察より,底泥は泥塊として剥ぎ取られるように洗掘された.また,洗掘の著しい部分のすぐ沖側には多数の小泥塊(直径2〜3cm)が存在し,さらに沖側では直径5〜7cmの大きな泥塊が堆積していた.これは洗掘された泥塊が傾斜面上での非対称な振動流下においてコロのような運動を行い,泥塊としての粘着力を強化させながら沖側へ輸送された結果であり,砂浜の洗掘状況では見られない凝集性土特有の現象である. 4.波による傾斜底泥の無次元洗掘速度をこれに作用する衝撃砕波圧p_mと底泥の剪断強度τ_sで表わした.この無次元関係式は,洗掘限界値の存在を示唆し,実験結果から無次元洗掘限界値(p_m/τ_s)_cは0.36であった.
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