研究概要 |
本年度は,有明海沿岸域における飛来塩分量の空間分布特性や透過性構造物によるその抑制効果などについて現地観測を行うとともに,海水滴の沈降速度や透過性構造物の除塩効果を考慮した数値シミュレーション手法の開発を行った。 現地観測側においては、熊本県北部の玉名群横島干拓で飛来塩分の現地観測を実施し、飛来塩分の空間分布特性と風向・風速の関係について調査した。また、沿岸部に防風ネットを設置し、ネット内外の飛来塩分量を実測・比較することで、防風ネットの定量的な効果について調べた。また、数値解析では、飛来塩分の沈降速度や拡散過程における降雨の影響を考慮した数値モデルを作成し、実測値との比較を行うことで、その数値モデルの検証を試みた。さらに、対策工として良く用いられる防風ネットの効果についても数値な検討を試みた。その結果、以下に示す結論を得た。 ・現地観測により、弱風時(2〜3m/s程度)における飛来塩分の空間分布特性は、風向よりも地形に起因した風速場の乱れの影響を強く受ける。 ・防風ネットによる飛来塩分の抑制効果を検証したところ、弱風時(2〜3m/s程度)には20〜25%程度の抑制効果が得られることがわかり、その有効性が定量的に明らかになった。 観測値との比較検討を行うことで、現地に即した数値モデルを作成した。また、堤防背後域での3次元的な流速場の乱れが、飛来塩分の拡散機構に重要な役割をしていることを明らかにし、マスコンシステント・モデルを用いた3次元の風速場を、観測結果に基づき再現した。
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