窒素類を代表する物質として硝酸態窒素に注目し、その流出機構をモデル化するために必要な観測データの収集とモデル化のための検討を行った。 1.モデル化のための観測データ収集 徳島県白川谷森林試験流域(徳島県三好郡山城町栗山)においてこれまで行ってきた、渓流水、土壌水及び降水の水質観測の他に、月1回の頻度で土壌のサンプリングを行った。1回のサンプリングでは深さ10cmから50cmまで、10cm毎に合計5つの土壌を採取した。この作業は来年度半ばまで継続して行い、全窒素量の分析に供する予定である。あわせてモデリングに必要不可欠な地温データ(深さ20cmと40cmの2深度)も収集した。 2.モデル化のための検討 前年までに得られた、気温データ及び水質データを利用して、硝酸態窒素の流出機構(硝化・流出)のモデリングを行って、渓流水質(硝酸態窒素濃度)の季節変化の再現を試みた。その結果、気温データと水質データだけでも渓流水質の季節変化を大まかに表現できたが、春期から夏期にかけての変化を的確に再現するためには、当初の構想通り、地温データをモデルに組み入れる必要があることが分かった(水工学論文集42巻で発表)また、硝化過程のモデリングや脱窒過程を検証するデータとして土壌中の全窒素量の把握も必要であることか分かった。 3.次年度の予定 収集している地温データと土壌サンプルを用いて、硝酸態窒素の森林土壌からの流出過程をより的確に表現しうるモデルの構築を行い、森林流域の水質浄化機能の定量評価を試みる予定である。
|