本年度は、既存研究成果をもとに、海外先進事例のヒアリング、既存資料に基づく立地動向の変化と交通動向の変化、次年度実地調査準備のための予備調査を実施した。 海外事例については、当初は、英国とオランダの2事例を想定していたが、既存研究をさらに調査した結果、ドイツの新しい事例のほうが調査意義のあることが判明したため、最終的にはドイツのオーバーハウゼンと英国のシェフィールドの2都市を調査した。両都市とも新規の軌道系システム導入(路面電車を高度化したシステム)に際して、都市開発との連携を図ったいるが、オーバーハウゼンでは、開発の成功と軌道系システム利用促進が相乗効果をもたらしている反面、シェフィールドでは、軌道系システムの利用がおもわしくない、その違いは、連携における細部の詰めと、軌道系システムのサービスの中身や政策的位置づけに起因することがわかった。 既存資料からは、首都圏郊外の典型5都市における地図作業を通して、病院等公的施設の郊外化がこの20年で大きく進んだこと、首都圏郊外部で自動車への依存傾向が大きく高まったことが判明した。 以上の成果をもとに、公共交通の利便性と鉄道駅からの距離を軸に病院と市役所の2種類の施設に関して、首都圏郊外の典型3都市の計7カ所において、交通手段別の集中交通量調査をプレサーベイとして実施し、自動車分担車が、駅からの距離と公共交通の利便性に影響を受けることを確認した。この結果をもとに、次年度は本格調査の実施と、立地政策代替案モデルの構築を図る予定である。
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