本研究の目的は、幹線街路網の混雑状況と地区内の交通環境の水準をリンクさせ、幹線街路網の各地点と地区内の区画道路の各地点の相対的な利便性を指標化し、都市全体の交通と地区の居住環境のバランスを考慮して、地区計画の優先順位や整備水準を検討するためのモデルを構築することである。全体としての目的を達成するために、個別に研究目的として概略的には以下のものを想定して研究を進めている。 (1)各地区内の区画道路と幹線道路上の各地点の相対的な利便性を決める指標の構成と最適化問題としての定式化 (2)ドライバーの経路選択行動を下位問題として取り込んだ2段階最適化問題 (3)地理情報システムを含む計算機システムの構築し、実際の道路網を用いた地区計画優先順位決定問題の検討 このうち本年度は、(1)(3)についての研究を中心に進めた。 (1)では、既存の地区交通分析で扱われた流入交通量と居住環境との関連性を整理し、研究の位置づけを明確にした。さらに、各地区内の区画道路と幹線道路上の各地点の相対的な利便性を決める指標を定めた。この指標については、今後アンケート調査を実施し、パラメータ推定を行っていきたいと考えている。(3)については、地理情報システムを用いた視覚的検討のためのシステム化は、来年度に研究を進める予定であったが、この部分については当初の予定よりも早く研究が進み、本年度の土木学会中部支部において既に成果を公表した。この研究では、各地点の相対的な利便性を決める指標を簡易的に決定し、交通量配分を用いて岐阜市の部分的な道路網に対して地区交通対策の相互関係や優先順位の検討を行った。また、2段階最適化問題と組み合わせ最適化問題についての計算手法についても平行して研究を進めており、一定の成果が得られている。来年度は、今年度の成果を踏まえて数理最適化問題としての定式化と2段階最適化問題への拡張を中心に研究を展開する予定である。
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