研究概要 |
平成9年度科学研究費補助金によって行った研究は,交通行動だけでなく活動記録も同時に集められたアクティビティパネルデータを用いた生活行動の時間配分モデルの構築である.一般に交通行動はそれ単独で発生するものではなく,ある活動を行うために他の場所への移動として発生することが多い.そこで交通を本質から分析するためには生活行動がどのように行われているかを知ることは非常に重要である.本研究では活動時間の配分に特に着目し,個人の選択行動に効用最大化理論を適用して,それぞれの活動の限界効用が一致する点で活動時間が配分されるとの仮定に基づいた分析を行った.手法としては各活動について限界効用が逓減する形の直接効用関数を定めた上で,先に延べたアクティビティパネルデータに回帰分析を行って得られたパラメータを求めた.このアクティビティパネルデータは地域の経済を左右する大企業の勤務形態の変化に合わせて行われたものであり,その勤務形態の変化が個人の生活行動によって得られる効用にどのような変化を与えたのかの分析を行った.その結果深夜勤務を排した新しい勤務形態は,わすかではあるが個人の生活効用を全体として改善する方向に向いたことを示した.また,それとは別に選られたモデルを用いて,商店の営業時間の変化や家族との接触の度合いの変化などといったさまぎまな環境の変化が起きた場合の生活効用の変化をあわせて分析し,仮定された環境の変化が属性別の個人の効用にどのような変化をもたらすかを示した.その結果はいずれも予想される変化の方向を示し,本研究で推定したモデルの信頼性が高いことを証明した.
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