研究概要 |
本研究では,経路選択シミュレータを用いた動的交通情報提供の定量的評価システムの構築を目指している.平成9年度は,経路選択シミュレータの構築,ならびに,それを用いたドライバーの行動把握のための屋内実験を実施した. 最初に,携帯型パーソナルコンピューターを利用した経路選択シミュレータを構築した.この経路選択シミュレータは,被験者に仮想道路ネットワーク上での運転を疑似体験させ,そこでの逐次的な経路選択をデータとして収集するものである。すなわち,被験者はモニターに表示される運転席から見た前方の交通状態,スピードメーター等の数値,所要時間等に基づき,自身の選択の結果として現在遭遇している交通状態を擬似的に体感できるものとする.また,提供情報の種類,表示形態および情報の精度については,実験者側でコントロール可能なものとしてシミュレータを構築した.次にこの経路選択シミュレータを用いて,提供情報とドライバー行動の関係を把握するための経路選択実験を実施した.この実験では,被験者の出発時の経路選択と走行途中での逐次的な利用経路の再考・変更に関するデータを収集した.特に、ネットワークに対するドライバーの知識量の差異が,情報提供下の経路選択行動に及ぼす影響について検討した.また,情報システムから提供されるメッセージのレベルと被験者の知識量との相互作用についても検討するため,実験内で提供される情報メッセージの詳細度を体系的に変化させた. 現在までのところ,この経路選択実験を通して,走行経験の豊富さと提供情報の影響力との関係の一端が明らかにされている.例えば,渋滞情報と旅行時間情報を比較した場合,意思決定の判断材料としてより直接的な後者の方が,ドライバーの走行経験の差異による影響を受けにくい等の知見を得ている.
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