深刻化する道路混雑や大気汚染によって観光地の魅力が損なわれている現状において、各地でTDM(交通需要マネジメント)が実施、検討されている。本研究ではその中でも世界的な観光地である奈良市街地で実施されているパーク・アンド・バスライドに着目した。本年度の実績は以下の通りである。 1.観光客を対象にしたアンケート調査の実施 2.観光客の特性把握と分類 アンケート調査からえられた観光行動特性、個人属性、余暇時間の過ごし方をもちいてコレスポンディング分析とクラスター分析を適用し、奈良を訪れる観光客を分類した。 3.観光客特性を考慮した交通手段選択モデルの構築 パーク・アンド・バスライド実施時の交通手段転換モデルを2.の観光客の分類でセグメントし構築した。 4.観光行動効用関数推定モデルの構築 観光活動から得られる効用を観光時間やポイント数で、一方コストを支出、移動時間等によって表現し2.の観光客の分類にしたがって効用関数推定モデルを構築した。 5.TDMの観光行動効用関数を用いた評価 パーク・アンド・バスライドを中心としたTDM施策の代替案を作成し、3.、4.で構築した各モデルを適用して、観光行動の効用値推定のケーススタディを行った。その結果、TDM施策の特性によって観光客グループ間の交通手段の選択結果およびその結果の観光行動効用が異なることが明らかになった。したがって、観光都市でのTDMを観光地の魅力化の一方策と位置づけ、観光ポイント、宿泊施設などの観光施設とターゲットとなる観光客特性の方向性をあわせることによって観光マネジメントの概念を適用できることが明らかとなった。
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