医療施設は、交通網で連携されることで、人命を保持することに重要な役割を果たしている。本研究では、災害等により交通網に途絶が生じた際を含め、医療施設へのアクセス性の分析、ならびにアクセス交通の確保を可能とする交通網の整備計画手法の開発を行ってきた。 特に医療施設へのアクセスが複数の経路で保証されることは、現実的に予期せぬ事態に有効であるばかりではなく、利用者に対して大きな安心を与えることになるものとの観点から、代替施設および代替ルートの存在を考慮した緊急輸送ルートの選定方法について考察を行った。 具体的には、まず最寄りの施設と、その施設への経路途絶時の代替施設への経路所要時間の比を、道路網の一つの評価指標として設定した。その評価指標がどの都市においても所与の基準値を満足するために必要となる、道路整備計画路線を選定することを課題とした。この問題を解く計算手順を示すとともに、山口県の地域道路網を対象にした事例研究に基づき適用性を検討した。 その結果、交通網と施設配置をグラフ構造でモデル化した限りにおいて、医療施設へのアクセスを2系統で保証する道路網の整備計画路線を具体的に提示することが可能となった。
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