本研究は、(1)火災延焼シミュレーション・システムの入力系システムの整備・開発、(2)オープンスペース・緑地等の延焼阻害要因を組み入れたシミュレーション・システムの開発、(3)広域市街地を対象とした地震火災危険分析システムの開発、(4)適用事例による既開発システムの操作性の評価、の4ステップに大別できる。 (1)〜(3)については、平成9年度の研究実績で報告済みである。本年度は、都市の耐火構造に着目し、金沢市と同様に、松山市の中心市街地を対象地域として、都市構造データを採取し、都市のハード的な防災対策であるブロック化計画と、初期消火(住民による出火抑制と消防力の整備による出火抑制)の組み合わせによる都市の耐火性向上について、評価システムを構成し定量的な分析を行った。その結果、両対象市街地において、初期消火とブロック化を組み合わせることにより大幅な延焼危険性の低減効果を定量的に明示することができた。また、松山市の適用事例では、道路ネットワークをオーバーレイすることにより、オープンスペースとしての道路の防災効果についても併せて評価可能であることを示唆することができた。 今回、金沢市と松山市の広域な市街地のデータを採取した。そこで、両市街地を都市構造要因として取り上げ、実験計画法による要因分析を行った結果、第一位の要因は、都市構造で約36%を占め、続いて風速が第二位の要因で約24%の要因であり、第三位は、初期消火率、建ぺい率でそれぞれ約14%となった。これらの結果より、強風時という気象条件は外生的な要因であるが、これよりも都市の構造そのものが重要な要因であることを定量的に示すことができた。これらの結果は、裏返せば有効な都市のブロック化と消防力の整備による初期消火の重要性を示唆していると言えよう。 本研究を進めていく上で、延焼阻害要因であるオープンスペース(特に道路)の効果に着目するとともに、車両の炎上火災による新たな加害要因をも考慮すべきであるという、新たな視点を得ることができた。
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