研究概要 |
本研究の目的は、安定した生物学的窒素除去を行うために、混合系生物膜内の硝化細菌を中心とする生態学的構造と硝化活性との関係を明らかにすること、及びこれら生物膜内のマイクロスケールの情報と生物膜全体の処理能力(メソスケール)との関係を明らかにすることである。 本年度は主に解析技術・手法の開発を行った。まず最初に生物膜内の硝化活性度分布を測定するための、先端径が5-20μmの高感度の各種微小電極(NH_4^+,NO_3^-,O_2,pH)の作成方法を確立した。また作成した各種電極を実際の生物膜を馴養する基質を用いてキャリブレーションを行ない、生物膜内のNH_4^+,NO_3^-,O_2,pH濃度分布が25-50μm間隔で測定可能であることを確認した。培養基質中に存在する妨害イオン等の影響も合わせて評価した。 次に、生物膜内の硝化細菌及び脱窒細菌の存在形態及びその分布を解析するために、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、脱窒細菌、全細菌(Eubacteria)を特異的に検出できる合成DNAプローブをデータベース(Ribosomal Database Project(RDP))に登録されている16SrRNAの塩基配列データを加工、多重アライメント解析し目的とする各プローブの塩基配列を決定した。決定された塩基配列に基づきオリゴヌクレオチドプローブ(5'末端をFITC,TRITC等の蛍光色素でラベリングする)を作成した。蛍光合成DNAプローブの特異性及び最適ハイブリダイゼーション条件等(ハイブリダイゼーション温度、ホルムアミドの濃度等)を、Nitrosomonas europaea,Nitrobacter winogradskvi,Pseudomonas fluorescenceの純粋株の人工混合培地を用いて決定した。その結果、生物膜内の硝化細菌を特異的に検出できることを確認した。
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