研究概要 |
最終処分場からの浸出水の漏洩リスクを低減するためには,遮水シート上に正水圧を付加させる要因となる処分場底部での浸出水貯留を極力回避することが重要であると考えられる。そのため,本研究は処分場底部にキャピラリーバリアを利用した多層構造の集排水システムを設け、浸出水を底部遮水シートに到達させることなく迅速に場外へ排除する構造を提案し,その排水効果に与える影響因子について検討した。 キャピラリーバリアとは上部に細粒土層,その下部に粗粒土層の設ける互層構造を形成させ,それぞれの層の毛細管吸引力の違いを利用して細粒土層内に水分を保持させた状態で境界面上を側方へ水分を排除させる技術である。そこで,本研究では,細粒土層,粗粒土層にそれぞれ3種類の砂(微細砂,細砂,中砂),砕石(砂利,砕石6号,砕石7号)を使用し,2次元実験装置(幅60cm,高さ70cm,奥行き15cm)に,細粒土層厚35cm,粗粒土厚20cmで充填し,上部より降水を与え,勾配,降水量を数段階に変化させる不飽和浸透実験を行った。また,並行して土柱法による水分特性曲線の測定,飽和透水係数の測定,流速制御法による不飽和透水係数の測定,一次元不飽和浸透実験,2次元不飽和浸透実験による水分拡散係数の決定等を行い,各試料について行い2次元飽和不飽和浸透流解析に用いる水分移動パラメータを求めた。 互層構造に対する2次元不飽和浸透実験の結果,キャピラリーバリアを利用した排水システムの排水効果は,試料の組み合わせ,特に上部細粒土層の透水性と毛細管吸引力のバランスに強く依存していることが明らかとなった。また,勾配,流量の影響について検討した結果,流量の上昇,及び勾配の減少により排水効果は低減するが,流量の影響に比べて勾配の影響が極めて大きいことも確認された。試料の物性値をもとに行った飽和不飽和浸透流解析においても2次元互層不飽和実験の結果は概ね再現できたが,境界面上の凹凸に起因する下方への水分移動については若干の検討の余地があることが示唆された。また,より実規模を想定した大規模実験装置(幅3.6cm,高さ1.5cm,奥行き20cm)による同様の実験も行ったが,結果は小規模と同等のものであった。
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