研究概要 |
金属表面処理排水では,数百mg-N/L以上の硝酸イオンを含有するとともに脱窒の電子供与体となる成分はほとんど共存せず,さらに,pHが2程度の強酸性であり,脱窒処理を行うには,電子供与体成分の外部添加と脱窒活性を維持する環境条件を作り出すことが必要となる.本研究では,電子供与体源として水の電解で生成する水素を直接的に用い,脱窒菌群を陰極となる電極に集積固定した固定化微生物電極を反応槽内に設置した新たな脱窒処理の可能性について検討した.一般に,上記排水は,処理の第一段階として石灰石や消石灰添加による中和処理が施されており,生物学的脱窒のpH条件として好ましいので,まず,中和処理水の本法による脱窒処理を検討した.活性汚泥を種汚泥として混合培養している脱窒菌培養槽に電極材を浸漬して作製した脱窒菌固定化微生物電極を用いた完全混合型反応槽を作製し,回分および連続処理実験に用いた. 脱窒処理速度は,電極値の増大に伴って向上し,電解生成水素は直ちに高効率で脱窒の電子供与体として利用された.しかしながら,陰極の電流密度が,0.15mA/cm^2程度を越えると,速度の低下と水素の気相への残留が見られ,最適電流密度操作条件の存在が示唆された.脱窒反応の化学論量以下の有機物水素供与体の添加は,脱窒速度を促進し,残留有機物のない処理を行うことも可能であった.これらに基づいて,連続処理実験を行ったが,中和処理で残留する数百mg/Lのカルシウムイオンの共存がプロセス阻害の原因となり,脱窒処理速度が著しく低下した.これは,陽極炭素材の通電に伴う電気化学的酸化で生成した二酸化炭素と陰極付近で高濃度となるカルシウムイオンが反応し,その一部が陰極表面に炭酸カルシウムとして析出するためであることがわかった.中和処理水中のカルシウムイオン濃度を低下させれば,脱窒処理は阻害されることなく進行した.
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