本研究では、都市地震防災計画の策定に役立てるために、建築物空間における地震時における安全性を構造・空間機能の側面から総合的に評価することを目的としている。本年度の研究成果を以下にまとめる。 1)実際の地震の際の条件に応じた家具の振動台実験を行いその振動性状・転倒状況を調べた。パラメータとしては入力振動の方向、家具の種類、設置状況などを考慮した。また、加速度計などのセンサーを取り付け、家具の応答加速度・変位を明らかにし、各種パラメータと振動性状との関連について明らかにした。その結果、家具の種類、設置状況により家具のロッキング量は大きく変化すること、特に、水平2方向および3方向入力の場合、家具の振動が不安定になり、応答量が増大する傾向にあることが明らかとなった。 2)3方向地震力の作用する場合の建築空間の崩壊過程を明らかにするために、鋼構造立体骨組の振動台実験を行った。パラメータとしては地震力の方向(水平1方向、水平2方向、3方向)および建物階数とした。その結果、1方向入力時は安定した履歴を示したのに対し、2方向、3方向入力時では履歴が不安定な部分が生じ最大応答も増加する部分が多くみられた。水平2方向の断面力の相互作用、柱軸力の変動が構造物の応答に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。 3)各自治体における建築空間被害の軽減への取り組みに関するアンケート調査を行った。アンケートの設問としては、建物の地震被害推定および耐震診断・補強への取り組み、地震発生時の対応、防災対策の現状などを挙げた。全国の約500自治体に発送し、そのうち50%程度が回収できた。現在データのとりまとめを行っており、来年度引き続き検討を加えていく予定である。
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