本研究は、都市地震防災、およびその計画策定に役立てるために、建築物空間における地震時における安全性を構造・空間機能の両面から総合的に評価することを目的として平成9年度より進められてきた。 本年度は平成9年度に引き続き、以下の諸点について研究が進められた。 1. 3方向地震力の作用する鋼構造立体骨組の振動台実験の結果より、水平2方向の断面力の相互作用、柱軸力の変動が構造物の動的応答さらには動的崩壊過程に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。また、これまでに構築してきた立体構造物の応答解析手法を拡張し、その解析結果を今回の実験結果と比較することにより、本解析手法が立体的な振動特性を良く表現できることを確認した。さらにはこの手法を用いてパラメトリックな解析を行い、柱軸力の変動や上下方向の地震力などが水平応答に及ぼす影響の定量的な評価を試みた。 2. 平成9年度に引き続き、実際の地震の際の条件(入力振動、家具の種類、設置状況など)を考慮したパラメトリックな家具の振動実験を行い、各種実験条件とその振動・転倒状況の関係を明らかにした。また、これらの家具の実験結果および家具の振動解析の結果を基に、家具の転倒危険度を評価する手法を構築すると共に、家具転倒を基とした室内散乱程度の推定手法の構築を試みた。 3. 各自治体における建築空間被害の軽減への取り組みに関するアシケート調査結果に関して、二次的なとりまとめおよび考察を行い、自治体における建物の地震被害推定および耐震診断・補強への取り組み、地震防災対策に関する現状などを明らかにした。さらには、この結果より防災行政における建築空間の安全性評価・向上のための手法構築の必要性が示された。
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