本研究は球形シェル構造物のモード連成作用効果および臨界入力加速度を明らかにすることを目的とし、著者らにより開発された球形シェルの軸対称および逆対称近似固有モードを用いた非線形運動方程式により以下の内容についての考察を行った。 (1)水平地震外力による上下方向モードの誘起および上下地震外力による水平方向モードの誘起を調べた。その結果、上下地震外力による逆対称モードの応答は(初期不正を考えなければ)起こらないこと、また水平地震外力による対称モードの応答は僅かであり、有限要素法による結果で上下方向応答と呼んでいるものは、逆対称変形モードの上下方向変位成分であることがわかった。 (2)応答変形が加振方向に対応する「加振型モード」の他にそれに直交する方向にも生じる「随伴型モード」が存在すると仮定し、定常振動解および安定行列式の導出を行い、水平振動による当該構造物の安定性を調べ、その伝播型モード採用の必要性を指摘した。 (3)「非線形加速度応答比」を「非線形応答解析時最大応答加速度を線形応答解析時最大応答加速度で割った値」と定義し、非線形加速度応答比を調べることにより神戸海洋気象台による阪神・淡路大震災地震動記録(Kobe-JMA)及びEl Centro水平地震動記録の臨界入力加速度を求め、非線形応答解析が必要な材料学的及び幾何学的パラメタ(半径-板厚比、半開角等)の範囲を示した。 なお、これらの詳細は日本建築学会構造系論文集の98年7月号に掲載予定である。
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