本研究では最終的には広域かつ地形条件・地盤条件等が地域内で変化する面状の地域に対して適用可能な自動追尾アルゴリズムを開発し、常時微動観測における最適配置を決定できるシステム開発を目標としている。 ここではその第一段階として、線上の対象地点における常時微動観測点の最適配置を検討するが、本年度は検討用のデータ作成のため、大阪大学吹田キャンパス内で起伏や地盤条件が途中で変化するような地域を選定し、十分密な形であると考えられる50メートル間隔で計13点について、同時計測及び異なる観測日時による移動観測の2種類の微動観測を行って今後の研究に使用する一連のデータセットを作成した。さらに、多点観測が同時に行われた場合と移動観測の場合を比較することで、観測された微動データの周波数特性がどの様に影響を受けるのか、観測データの解析手法と合わせ多角的な検討を実施した。 さらに、微動あるいは地震観測により得られた振動データにより、地盤だけでなく構造物の動特性同定に適用可能な各種の同定アルゴリズムに関する研究を行った。このうち、通常1自由度のモデルに適用されるRD法(Random Decrement Method)では、観測データより多自由度のモード型推定と、推定されたモードへの分解を行うことにより多自由度系のモデルへの適用を可能とするアルゴリズムの開発を行った。さらに、非線形の動特性の同定手法として適用可能である拡張カルマンフィルタ法による同定解析用コードを開発すると共に、拡張カルマンフィルタ法の弱点である発散問題を解決する手法として「適用フィルタ及び適宜重み付け手法」を提案した。また、通常多自由底線形モデルに適用される予測誤差法のアルゴリズムを、非線形モデルに適用可能となるよう拡張し、この手法による同定解析手法をシミュレーションにより検証した。
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