本研究の計画は、平成9年度と10年度の2年間にわたっており、初年度は基礎的な検討を中心に、計算機環境の整備も含め進めてきた。以下の3点について、結論を得た。 初めに、並列計算機構の検討を行った。ハードウエアとして複数のCPUを実装する事により実現するものから、一般の単一CPUのコンピュータをネットワークで接続して仮想的に実現するものまで様々な形式が知られている。当初本研究では、後者の仮想的な並列計算機構を実現するために、UNIXワークステーションを用いるPVMに注目した。しかしながら、パーソナルコンピュータの著しい高性能化により、ワークステーションに勝る性能を持つシステムが出現し、並列計算機構の選定に関しては、性能だけでなく、その汎用性も含めシステムを構築する必要性を認識した。 次に、有限要素法による解析プログラムを例として、並列化の手法を検討した。プロセスの並列化とモデル分割の並列化が行われているが、繰り返し計算を行わない静的な線形解析では、個々のプロセスにおける計算コストの偏りがあり、十分な効果が得られないと思われる。そこで、このような場合には、CPU個数に対応したモデル分割の手法が効果的である。 最後に、並列計算機構を実装するプログラミング環境の検討を行った。当初、PVMを利用し、既存の科学計算プログラムを応用する目的で、FORTRANによるシステムの実装を試みた。しかしながら、パーソナルコンピュータをプラットホームとしたシステム化においては、スレッド等の実装が充実しているJAVA言語やC++などの利用が適当であると判断した。
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